桂文我の“本屋で落語”第1回

青山ブックセンターにて「桂文我の“本屋で落語” 江戸の粋(いき) 上方の粋(すい)【第1部】 」へ。


この落語会は、桂文我と東京の落語家があるテーマに沿った演目を演じ、堪能するという趣旨のもので、今回が第1回。進行は金原瑞人
定員が120名である小さな落語会。マイクなしで聞き取れ、間近に実力者の落語に触れられる贅沢な時間だ。
第1回の第1部ということで、構成があやふやなところもあったが、フラッと噺を始めるのは、とても清清しかった。
また客層も落ち着いていて、良く笑っていた。

演目は以下のとおり。

桂ひろば『大安売り』

柳亭市馬長屋の花見
 初めて噺を聴く(観る)。とても落ち着いて感じで話すのだけれど、気が付いたら滑稽な馬鹿馬鹿しい会話を展開していた。ツッコミ(大家の言葉)が半ばあきれた、しかし温かみのある話しぶりが好きだ。「東京の落語」を感じた。文我が「骨太の落語」と称していたが、筋の通った端正な言葉ぶりからそれを感じた。

桂文我『百年目』
 数年前に桂米朝歌舞伎座の落語会を(テレビで)観たときに知った演目。米朝から直接稽古をつけてもらったとの事で、当然似ているのだけれども、若さからか、勢いがある。番頭の目まぐるしく変わる感情を楽しく表現していた。驚いたり、恐縮する姿は見ものだ。ストーリーも、花見の下で陽気に騒いだり、檀那の話でしみじみしたりと何度聴いてもこの噺はいい。


2時間ノンストップだったので結構見ごたえがあった。まず、文我と市馬と金原でフリートークを30分ほどして、落語を3席して、最後に会場の質問に答えるという構成。中入りがあっても良かったのではないかと思うほど密度が濃かった。フリートークは若手がしそうな取るに足らないプライベート馬鹿話では決してなく、非常に興味深い楽屋話で笑い、そして唸った。

特に二人に共通していたのが、落語への情熱の深さだ。その表現の仕方はまるで違うが、お互いの藝を認め合っていることが察することが出来た。二人の師匠が落語の真髄を究めていった人気と実力を兼ね備えた名人であるから、その藝が伝承されているのでは、とまで考えてしまった。

とりあえず、文我の落語「通」入門を買ってしまった。
気が向いたらまた行こう。

Honya